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​株式会社 今田酒造本店

​株式会社 今田酒造本店

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安芸津の大芝島へ移住し、九条ネギ、コーヒー豆を栽培する傍ら、まちづくりに携わっている山田晋平さん。安芸津に対し、「発酵するまち」であってほしいと祈る想いについて、お話をうかがった。

山田晋平さんインタビュー

​更なるものを生み出していくために。

揺るぎない信念を原動力に、

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2020年に安芸津へ移住した山田さんは、どのような変遷で安芸津と出会い、どのようにこの地で進んできたのだろうか。
茨城県出身の山田さんは、東京農業大学で学んだ後、千葉県にある植物工場ベンチャー企業で研究職に就く。以前から建築も好きだったこともあり、いつか農業と建築とが共存した生活がしたいという思いが、徐々に土のフィールドへ向かわせた。そして岐阜県への移住を決めるが、いざ動き出した瞬間、山田さんへ一本の電話が入った。それは、東広島市八本松町の美味しい野菜を作る農家さんの会社の立ち上げを手伝ってくれ、という知人からの申し立てであった。そして「一度その農園の野菜を食べて、それで決めたい」と答え、八本松町の農園へ向かう。そこで食べた、素焼きし塩をかけた白ネギは、思わず身を乗り出して感動してしまう美味しさであったのだという。
「どうやってこのネギ作るんですかと聞いたら、どうやら土づくりに秘密があるって教えてもらって。これはちょっと一回ここで土づくり学びたいなって思って、それでとりあえず広島に来たんですよ。」

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そうして3年間八本松町で土づくりを学ぶ。その後独立することになり、安芸津と安芸津の土に出会うことになる。海の見える土地に広がる赤土は地中海さながらであり、山田さんはこの地で新たな農業を始めようとした。瀬戸内の多島美が見渡せ、牡蠣小屋、柑橘、おしゃれなコテージ、その上使われてないハウスや赤土まである土地を見て、山田さんは「絶対にここだ」と直感した。それが大芝島だったという。土地や家は飛び込みであたっていった。
「大芝島は、すごくいい人が多くて。土地も空き家もすぐに紹介してもらえました。」
そう当時のことについて話す山田さん。

 

「何事も最初は嫌われるかもしれない。でも自分の中に一本信念があれば、それでいいんじゃないですかね。僕はこの島、安芸津、瀬戸内のポテンシャルを活かした新しい農業というものに変な確信があったので。それはもう自信をもって、何を言われてもやろうと思って」
新しい価値を持ち込み、新しいことをやるには勇気と嫌われる覚悟が必要だと話す。それを一瞬ではなく、何年も貫き通す根気と信念があれば、いずれ誰かに伝わる。山田さんには明快な意思と信念のもとに、毅然とした確固たる覚悟がある。

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希少な国産コーヒーを瀬戸内海で唯一栽培している山田さん。移住して約1年後にコーヒー豆栽培の話を受けたという。
「コーヒーがこの島に来てくれたら絶対地域活性化するなと確信したので。野菜とか柑橘もいいんですけど、やっぱりコーヒーって、付随してカフェとか飲食がつながってくるじゃないですか、周辺で。波及効果が他の作物とは明らかに違う。コーヒーに集う人々が来て、また新たな事業が生まれというのが想像できた。」
そうして農園と焙煎場のふたつセットで話がとんとん拍子に進んでいった。
「やっぱり僕の中でのコーヒーが盛り上がるというのは、安芸津の大芝島以外でもコーヒー農園ができた時ですかね。例えばしまなみのどこかで農家や企業さんがやりたいって手を挙げてくれたらワクワクしますよね。自分は技術とかもオープンなので、自分が知ってることなら何でも伝えたいと思っています。当然お金は取りませんし、他のところでもコーヒー文化に火がつくきっかけになれば」
今後国産コーヒーが瀬戸内の色々な地域に広がっていってほしいと話す山田さん。道を切り開いてきっかけという火種を作り、自分の役割が済めばその場から去り、どんどん次の人に受け継いでいきたいと話す山田さん。さまざまな人を巻き込みながら、世間に新たな価値観を提供していく姿勢が感じられた。

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ネギやコーヒーに留まることなく、山田さんはもうひとつ「エイトファーム」というプロジェクトも進行している。単なる作物の生産現場ではなく「表現の場」をつくることだと話す。
「エイトファームは文化を濃縮した場にしたいんですよね。農業は英語でアグリカルチャー。カルチャーの源泉なんですよね。カルチャーの先にあるのが今我々がいる文明です。こういう時代だからこそ原点を大切にしたい。だから単に農業って言われるのも嫌だし、アートの場だねって言われるのも嫌だし。カルチャーが生み出される場所、何かが生み出される場所にしたいんですよね。若者の表現の場にできたらなって。」
一種の表現として農業を行う山田さん。表現は、第三者がいてはじめて成立しうるものである。観者のいない表現は自己満足に過ぎない。他者を介して生まれるものも表現は含蓄しうる。その場をものが作り出される現場である安芸津に作ろうとしているのだという。他にも大芝島のコーヒー豆農園のすぐそばにシェオフィスとゲストハウスを作り、新たな事業の展開を目論んでいる。多岐にわたる山田さんの取り組みは、失速を知らない勢いで増している。未来を語ることを恥じる必要はない、という想いが伝わってくる。

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「何から何まで東京と違います。東京はものが来るって感じじゃないですか。生産の現場じゃないんで。こっちはものができる瞬間が見える。日本の代表的なものが安芸津に揃ってたんで。吟醸酒の発祥、シャインマスカットの発祥、赤じゃが、牡蠣筏や柑橘畑も初めて目の前で見ました。そして瀬戸内の多島美。特に安芸津は観光地でもないのでそれらがひっそりとあって勿体無いなっていうのが第一印象でしたね。」
安芸津を当初からポテンシャルのあるまちだと思っていたと話す。

山田さんが安芸津に来てから、ポテンシャルを表出化する取り組みがどんどん始まっていったという。現在、同年代が安芸津で何かやろうとひとつの場所に集まっている。お互いが触発し合う土壌がいま安芸津にはある。
「やっぱり地の人も外からの人も含めて、常に作り出す街であってほしいですね。三浦仙三郎が吟醸酒を作り出したように、入ってきた人と地元の人で新しいものを相乗効果で日々生み出していく、一回だけじゃなくて、どんどん変わってく街になっていったら面白いですね。常に新しいものが生まれてるまちってなかなかローカルでないと思うんで。そういう街に安芸津はなれると思うんですよね。」

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​あしたに、

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安芸津と

「安芸津は発酵し続けるまちであってほしい。発酵ってひとつの微生物だけじゃないじゃないですか。段階によって、どんどんバトンタッチしていくんですよね。それを人と捉えて。だんだんバトンタッチや相乗効果で出来上がる、そういうまちになったらいいなって思います。」

2023年8月19日

トモシビファーム
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