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上々企画 株式会社
上岡裕明さんインタビュー
人生の拠点をデザインする。
人と人を結びながら、

安芸津に事務所を構え、企画からデザイン制作、マーケティングなど行い、人と人がよりスムーズに、効果的につながるお手伝いをしている上々企画株式会社。デザインの在り方とご自身の歩みについて、代表の上岡裕明さんにお話をうかがった。
デザインによって人と人とを結ぶ
名刺やカタログなどのビジネスアイテム、事務用品、POPやDMなどの販促物、動画制作やパッケージ制作など、多岐にわたるデザインを多業種において行う広告・デザインの総合企画・制作事務所である上々企画。上々企画は、「つなぐ、をもっと」の考えのもと制作を行なっている。デザインとは、人と人とを結ぶアイテムであると考えているという上岡さん。
「結局そのデザインを通じてものを買ってもらうってのももちろんそうだけれども、それは最終的な結果であって。その人が作ったものと買いたい人とを繋ぎ合わせる。抽象化したらデザインってそういう目的なのかなって思ってます。だから、デザインは人を繋げる、をモットーにしています。」
提供したい人と求めている人、伝えたい人と知りたい人という相対的な関係を繋ぐ仲介役としてデザインは在るという。双方の想いをひとつのデザインに落とし込むこと。それは想いをひとつにするパイプ役のようなものかもしれない。上岡さんは繋げた先に、コミュニティができていく、と話す。直線的関係から円的関係に結ぶ役割もあるのだろう。そのためにお客さんとは、win-winな関係や三方良しであることを常に意識しているという。

本当にやりたいことは
上岡さんの人生は、自分がやりたいこと、得意なこと、求められていることの3点が重なることは何だろうと考え、四苦八苦しながら探し求め続けている人生である。3点のバランスを重要視しているのだという。これが好きなのかもしれない、これをやれば世の中の人のためになっているかもしれない、との思いから最初は自動車整備士として働いていた。しかし、やりたいことの比重はどうか、と疑問を抱く。そして数ヶ月間、さまざまな地域に行き、その地域の人と直接話をする時間を過ごした。そのうちに自分が育った地域のことを知らないのではないか、と原点回帰し、地元である安芸津に戻ってくることにしたという。そして地域のための組織とは何かと考えた際、地域経済に精通する農業に役立っている農協が思い浮かび、農協に勤め始める。東広島市や企業とタイアップイベント企画を行う他、農産物の生産や営業、プロモーションやブランド推進を進めた。
「農協で働いている時、農家さんの手取りや収益を高めたいって思いがあったんですよ。その中で高くて売れるものと安くても売れないものが見えてくる時があって。それはなんなんだ、と考えていくうちに、デザインや売り方、プロモーションが付随してくることがわかって、デザインや広告への興味が高まって。」
農協時代から現在に至るまでのきっかけについて話す上岡さん。徐々に農業だけに限らず、もっと広い分野を扱いたいと思うようになり、デザイン業界に転身したという。


一筋のあかりを灯す仕事
受け手にとってのスイッチを、作り手の中にあるものから作っていく。そのスイッチを不特定多数に押してもらうこと、それが上岡さんの仕事なのかもしれない。
「この仕事で楽しいところは、自分で勉強をその都度やっていくことに尽きます。農協は取引先のジャンルは狭いんですよね。でもデザインって幅広い。あんまり携わらなかった建設業とか士業とか、自分と繋がりがなかった人と広く繋がれます。だからその都度わからないことがいっぱいあるし、それを自分で勉強すること自体がすごく楽しくて。」
押しやすいスイッチを仕掛けるために、内と外のことを隅まで知ること。知識欲のある上岡さんにとって、知るという行為そのものが楽しいのだという。お客さんのことを通じて、その業界がどうなっているのか、その業界がどこに向かっていくのかが見えてくる。上岡さんは、その見えてきた世界の一役として役に立てれば、と話す。新しい人と出会って仕事をし、また新しいその人の業界を知る。同じ業界でも人の考えは違う。その人個人が見ている景色や考えを随時インプットするのだという。混濁としている世の中に、一筋のあかりを灯す仕事のようである。

デザイナーとしてのまちづくり
東広島市議会議員の顔も持つ上岡さん。安芸津で仕事をする中で、地域にいる企業の存続や業績に関する課題を目の当たりにした。それは、外部環境に対応していけてない仕組みが原因にあるとわかり、それを解決するために議員に立候補したという。
「まちづくりって観点でデザインをやっているし、市議会議員になって、まちづくりっていうのにも直接携わらせてもらってる。この両面を担えば、まちづくりをデザインできるんじゃないかと思って。地域の課題に紐づけて自分たちが関わっていくために、デザインを広げていきたいです。」
混濁を混濁のまま受け入れながら、現実に向き合っていく清澄さがある。上岡さんには、デザイナーと市議会議員との垣根はない。

「いろんな地域を見てきて、どんな地域でも、私たちのまち良いよって言うんですよ。だから僕も安芸津が好きなんだなって気付いて。なんでそのまちが好きなのかっていうと、自分の生まれたルーツとか、自分のアイデンティティとか存在意義とかそう言うのに紐付いていくから、愛着が湧いてるってことだと思うんですよね。Iターンで入ってきた人たちもそこが自分の人生の起点になるって感じたからその地域が好きになったんだと思うので。どこの地域に自分の人生の起点を置くかでどの地域のことが好きになるかが変わると思うんですよね。僕が市議会議員にならせてもらったように、自分の人生でここがターニングポイントっていうのを作っていきたいです」
地元のことを、愛着や自分そのものだと話す上岡さん。さまざまな人の人生の拠点を作っていきたいのだという。上岡さんの話す地元像は、それを思い浮かべるだけで自分への肯定が、ぽんとその人の中に生まれるようで、こびりついて離れない。

